エッグタルト580万円?
百貨店に行く。
特設売り場がある。
美味しそうなエッグタルトだな、と足を止める。
その一瞬を逃さず、男性店員さんが私にチラシを渡そうとした。
けっこうです、と去る。
やっぱ買おうと戻った。
店員さんが「戻ってきてくれましたねっ」と声かける。
「エッグタルト二個」と注文する。
「はいっ。580万円っ」
な・・・なつかしい・・・
このノリ、昔はこうだった。大阪では。
クスッと笑った後、支払に百貨店カードを出した。
カードを見た店員さんは、
「いつもありがとうございますっ」と礼を言った。
特設店舗だから、その百貨店の直営じゃない。
でも、この百貨店のために、彼は、いつもありがとうと礼を言った。
商品を受け取り、そこを去った後、後悔した。
なぜ私は、「500万円に負けて」と言わなかったんだろう。
なぜ彼のノリに、一緒に乗って言葉遊びをしてあげなかったのだろう。
「ポイントは?」以外の言葉を久しく聞いていない。
あるいは、「現金かペイペイで」くらいか。
無機質な言葉しか投げかけられない時代を生きた。
男性店員さんに、言葉遊びをしてもらって気づいた。
すっかり、遊びの瞬発力がなくなった・・・。
そして、いまだ残る、大阪文化の遊び心に、
ああ、まだ残っていたのだ、と、胸を潤わせながらタルトを握って帰宅した。