そんなんちゃうねん。

歌舞伎の客席、一番前のかぶりつきの席に、外国の男性客がいた。
歌舞伎ガイドブック持参の歌舞伎ファンだ。

見せ場になると歌舞伎では大向こうからの掛け声が入る。
音羽屋っ。とか、中村屋っ、とか。
それは、大向こう。つまり、向こうのもっと向こう。
三階席の奥から声をかけるから、大向こうという。
演者のキメどころと、浄瑠璃の一瞬の間、その間に、掛け声が入り、キマる。
音曲と演技と客席が一体化する一瞬だ。

それを外国の客は理解していない。
大向こうから声がかかる度に、彼は何度も叫ぶ。
「ナリコマヤァ! ナリコマヤァ!ナーリコマヤァァァ」
彼はきっと、こう理解した。
・・今は、客席から声をあげていいタイミングにちがいない・・・


ちがう。


そのタイミングはプロ級に難しい。
歌舞伎に精通していないと、その間はつかめない。
一番前の席で叫び続ける・・・。
どれほど観劇と演者の邪魔をしているか、彼は理解していない。


文化の理解とは難しい・・・


これほど歌舞伎ファンでも、それをライブと理解する。
ライブなら、演者と共に叫び踊り盛り上がる。
異端を観て、初めて、日本文化の難しさを知る。
将来、たくさんの客が叫び続ける時代が来るのだろうか・・。
そんなんちゃうねんけどなぁ・・。

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