愛してると言ってみ

「頼むから、愛してると言ってくれ」
よく言われる。
愛?そんなんあると本気で思ってるのか。
嫌い、大っ嫌い、は、しょっちゅう言う。
英会話でもまた、「家族は嫌い」という。

ブラックアメリカンの大きな先生は、目を大きく開けて言う。
「頼むから、愛してると言ってくれ」

「ノーッ。アイヘイト!」

「だからね、ヘイト、は、強すぎるんや」と教えてくれる。
ヘイトはなるたけ使うな、と。
そして、どれだけ嫌いだと説明しても、「愛してると言ってみ」という。
アメリカ人にとって、愛、は、生きる上で重要な礎のようだ。

「私、バレエやってるねんで」と教えてあげる。
写真も見せてあげる。
先生は、「君のステージを観たい」と言う。
トレーニングだけだと何度言っても、踊りを見たい、という。

「君の白鳥の湖を見たい。見に行く」という。
「なぜ、上を目指さないんだ」という。
向上心と愛。
なんと、わかりやすい前向きさだろう。
それらが何も保証しないことを、私はもう知ってる。
努力したからって夢が叶うとは限らない。
愛、ってなもんが、幸福を呼ぶとも限らない。
レッスン最後、先生は顔を近づけて言った。

「愛してる、と、言ってみ」

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